仕事 料理人 転職

低賃金・長時間労働の飲食業は働き方改革でどう変わるか

更新日:

20歳から32歳までの12年間、飲食業に従事していた筆者がこれまでの飲食業を振り返り、低賃金・長時間労働の代表格であるこの業界が、働き方改革でどう変わるかを考えてみました。

なぜ飲食業は給料が安いのか。どうすれば年収を上げることができるのか。夢のある業界なのにそれ以上に辛い働き方を強いられているのはなぜか。この業界がこう変わったらいいな、という個人的な希望も込みになりますが、働き方改革を期に「飲食業界がこう変わっていく!」という予想を書いてみたいと思います。

スポンサーリンク

なぜ飲食業は給料が安いのか

これまで従事してきた経験からお店の数字に関してもいろいろと把握して来ましたが、一つ確実に言えることは、飲食業で高給を望むことは非常に難しいことです。

注釈を加えると「飲食業だけでは」望めない。それ以外に収入源があれば別です。あくまで飲食業一本で収入をあげようと思ったら、それこそ起業して「雇われ」から脱することが出来ないとまず無理です。

理由は2つ。

1つ目は、飲食店の売上に対する人件費の割合が大きいこと。大体売上に対する人件費の割合は30~40%程度です。利益をあげようとした時に出来ることは、売上自体を上げること。それよりも手っ取り早いのは経費を削減することです。割合が小さい経費を削減しても効果が薄いので手を付けるのはほとんどが人件費か原価を抑えることになります。つまり売上が上がらない限り、人件費にかけられる金額も上がることはありません。

2つ目は、生産性に限界があること。生産性とは、簡単に説明すると「労働者一人が1時間にどれだけ売り上げられるか」です。他業種との簡単な比較として、プログラマを例に挙げてみます。料理人一人が1日で挙げられる売上は、休憩なしで頑張っても10万程度が限界でしょう。プログラマが1日かけて一つのアプリを作った場合、運が良ければどれだけでも売れます。何百万、何千万なんてのは良く聞く話です。両者とも労働時間は同じです。そもそも労働の質が違いますのでこれをどうにかするのは無理です。

  • 利益が優先されるため人件費は上がりにくい
  • そもそも一人であげられる売上が低い

以上の2点が飲食業における給料が低い原因ですが、その背景としては「コスパ重視」による過度な安売り合戦が常態化したことにより、外食の価格を大きく下げて来てしまったことも大きな要因です。

働き方改革でどう変わる?

低賃金以上に問題があるのは「長時間労働」です。上記の理由から、一人一人を出来るだけ長く働かせることにより余計な人を雇わずに人件費を抑えられ、一人分の人件費で売上を最大限伸ばすことが出来ます。

もうお気づきかもしれませんが飲食店の「コスパ、安くて美味い」が、これでも利益が出ているのはこのように従業員に負担を強いることで成し遂げられているものです。(もちろん全てのお店がこうではありません)

残業時間の上限

この状況を是正するために、この法律で残業時間に上限を設けられました。おそらく飲食業界しか知らない方には「残業時間とは?」という感じだと思います(自分がそうでした)そもそも長時間労働が当たり前になっている飲食業界では法定労働時間なんてものは存在しないかのようになっています。

一応説明しておくと、週40時間、一日8時間までが法律で定められている労働時間になります。月にすると160~176時間。これを超えたものが残業に当たります。そういえばとあるパン屋さんで働いていた頃のこと。ある社員が当たり前に法定時間を超えて働かされていることに異を唱えたところ、その社員だけ労働時間が他の社員に比べて10%ほど抑えられていたことがあり「え?そんなこと出来るの?」となったことがありました。

話をもどします。ではどのように上限がつくのかというと、かなり複雑なのでここではものすごいざっくりとさせていただきます。「休日労働も含め、年間720時間」月にすると80時間まで。(正確には違いますがイメージで捉えやすいようにここでは簡単にしています)つまり月の総労働時間は「250時間」となります。

一日12時間拘束で1時間半休憩とした時に月の出勤が23日。休日が月7~8。私が社員で働いていた頃と比べたら夢のような労働条件です。300時間超えが当たり前でしたので300時間を下回った月なんかはあまり働いてないような感覚すらありました。

本当にこの上限を守れますか?

現在は飲食業を離れて2年ほど経ちましたが、この状況はおそらくほぼ変わっていないことでしょう。私が現役の時にこの条件が「夢のよう」だということはつまり、ほとんどのお店でこの条件を実現することはかなり厳しい、ということになります。

なぜなら上記で説明したように、労働時間を削ることは人件費が変わらないのに、労働時間を削った分の労働力が失われ、生産性が落ち、直で売上に響いてきます。いままで、人件費に負担を負わせてコスパを実現してきたお店はどうやって利益を確保していくのでしょうか。

どこまでもつか

この状況で考えられることを順番に見ていきます。

まずは法律を無視して利益を最優先させる、もしくは法律が適用されるまでに(中小企業は2020年4月から)労働環境の整備が間に合わなかったお店。この法律は守れなければ懲役または罰金の罰則が付きます。

もしそんな事になったらそのお店は社会的地位を落とします。そこで働きたいなんて人は当然いなくなるでしょうし、お客さんとしても公式にブラック認定されてしまったお店には行きたくはないと思いますので、いずれ無くなる運命にあるでしょう。

次に、なんとか労働環境を整え、罰則は免れたものの、付け焼き刃の対策しか打てずに、利益をそのまま落としてしまいジリ貧で潰れてしまう店も出てくるでしょう。

あとは当然考えられることとして、労働時間を短縮しなければならない代わりに給料を下げるお店が出てくると思われます。まあお店を潰さないためには真っ先に考えられることでしょう。これを期に飲食業の平均年収が更に下がることも考えられます。

おそらくこの段階で業界の3割くらいは無くなるのではないかと思っています(願望込み)。ではどういったお店が残るのか。それは現段階でこの基準をクリアしつつちゃんと利益を確保出来ているホワイト起業です。

飲食業の平均年収を上げるには

ここからは私の願望込で「飲食業の平均年収を上げるには」業界がどのように変わっていけばいいかを考えて見たいと思います。

業界の再編

この法改正でついてこれなかった起業が潰れて、結果業界の半分の起業が無くなる。すると今まで供給過多だった状況が一変、供給が需要を下回る。これにより外食の価値が上がり、外食費が高騰する。結果飲食業界の年収が上がる。

ここまでのインパクトがないとこの業界の年収が大きく変わることはまずないと思う。

30過ぎてからの転職。とにかく年収を上げたい時にこれだけは押さえておきたいこと

30過ぎてからの転職。今の業界を離れようと決断した時にいろいろと希望や不安の中で就職先を決めていくことになるかと思います。人生の中での一大決心。絶対に失敗したくはありませんよね。私は20代半ばまではう ...

続きを見る

外食費はなんでこんなに安いのか

大手牛丼チェーンやファミレス、スーパーのお弁当なども、なぜほとんど原価と変わらない値段で買えてしまうのか不思議でならない。仕入れ方法などの「企業努力」というと聞こえはいいが、その材料で料理を作る人の手間が必ずかかっているはず。その手間賃として人件費を上げるのではなく、その分売価を低くして人件費はそのまま。

もちろん売れなければなんにもならないのだけど、飲食業における「手間賃」とは、料理の質そのものにもろに関わっている。例えば世間にはよくわからない「手数料」というものがあります。その中には何の手間なのか全くわからないものに何万円も払わさせる、何てこともよくありますが、それらに比べたら料理人の料理に対する手間のほうがよっぽど思いが込められているはずです。

そもそも自分で作る手間を人に負わせて、自分が作るよりも遥かに美味しいものを提供してもらっているのだから、外食費はもっと高くてもいいと思っている。それもこれも全ては外食ブームで飲食店が馬鹿みたいに乱立するようになってしまい供給過多になった。そうなってしまっては安さ合戦になってしまうのは当然の流れ。

なのでここらで一旦安さでしか勝負出来ないブラック飲食店には全て潰れて頂いて、それから徐々に外食の価値を改めて世間に再認識してもらいたい。

結局料理がナンバーワン?

最後に、私事ではありますが、

これまでの経験で一番面白くてハマった仕事は何か?と聞かれたら、「料理人です」と答えます。

では一番仕事にしたくない職種は?と聞かれたら、「料理人です」と答えます。

料理はとても奥が深く終わりがない世界。突き詰めればどこまでもいける。ですがそれ以上に仕事が辛い。これではとても悲しすぎるので、是非この機会に業界がいい方向に変わっていってくれればと願っています。

スポンサーリンク


スポンサーリンク


-仕事, 料理人, 転職

Copyright© 諸行無常 , 2021 All Rights Reserved Powered by AFFINGER4.